こころの山 串田孫一(1961)

山の本でまずあげるなら串田さんになります。
串田さんは「アルプ」という山の文芸誌を1958年に立ち上げられた方です。

易しいながらも心に染み込んでくる言葉は
無駄なものを削いでいく登山という行為について
繰りかえし考えるきっかけを与えてくれます。

面白いのは寄り道がとにかく多いことです。
山に慣れているからでしょうね。
日帰りの予定でテントを持っていなくても、
野宿になることを全く恐れていません。

だからこそ沢山の発見があり、
頂上を目指すだけの者には
気づけない風景を見てきます。
そしてまた山へ向かってしまうのです。

単純に読み物としても興味深いです。
ダウンもない時代に雪山で野宿とか、
昔の秩父は果てしなく遠かったこととか、
ロープウェイのなかった谷川岳とか…
自分の体験と照らし合わせていくのも
楽しい読み方だと思います。

串田さんは絵も描かれていて、
ご自身の著作の表紙などを手掛けてもいました。
わたしは昔の装丁がとても好きです。
文章だけではなく本そのものが作品であることを
強く表しているからです。

地味な本かと思って開いてみたら…

こんなのオシャレじゃないですか?

こちらは「アルプ」です。

どこでも手に入るのは
「山のパンセ」(ヤマケイ文庫/岩波文庫)
読んでみて気に入ってくださったら
他の作品も探してみてください。
山のコーナーがある古本屋さんであれば
よく見かけると思います。

串田孫一(1915-2005)

東京大学文学部哲学科卒
「アルプ」の編集長を務めながら
東京外国語大学などでも教鞭を取る。

入手しやすい文庫本は
「山のパンセ」(ヤマケイ文庫/岩波文庫) 
近年の雑誌であれば
「Coyote」- No63. 串田孫一のABC –

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